相続とは、亡くなった方(被相続人)が所有していた財産を、法律や遺言に従い特定の人(相続人)が包括的に承継することをいいます。

 

遺産相続は、相続財産の額に関わらず必ず発生し、その対象財産、相続人の範囲や優先順位、相続手続き期間等も法律により決められています。

また、この財産を承継する方がいない場合には、被相続人の遺産は国庫に没収されてしまいます。

 

ここでは、意外と知らない相続の基本について簡単にご説明します。

 

相続の対象財産

相続の対象財産は預貯金だけではありません。相続財産には大きく分けて2種類あります。相続や遺贈によって取得した財産(本来の相続財産)と、みなし相続財産と言われるものです。

みなし相続財産とは、民法上は相続財産とされていないけれども、相続税の計算上は課税対象となる財産のことをいいます。

 

① 相続や遺贈(死因贈与を含む)により取得した財産

現金、預貯金、有価証券、貴金属、土地、家屋、貸付金、車、ゴルフ会員権、特許権・著作権などの経済的価値のあるすべてのもの、

② みなし相続財産

死亡保険金、死亡退職金、生命保険契約に係る権利(支払者(故人)と保険対象者が異なる場合の権利のことで、解約返戻金の額が課税対象となります)など

相続人の範囲

相続財産(遺産)をもらえる人は、大きく分けて二つあります。

  • 法定相続人:民法上定められた相続人。亡くなった方の配偶者とその子、親、または兄弟姉妹等
  • 受遺者:遺言書で遺産を譲り受ける人として指定された人

まず、亡くなった方の配偶者は必ず法定相続人となります。

法定相続人とは、民法で定められた相続人のことで、故人が遺言書を作成していない場合には、法定相続人間で相続が行われることになります。この場合、配偶者以外の方は、以下の順位で配偶者と共に、相続人となります。

 

相続順位

法定相続人 配偶者の法定相続分
第1順位 子供(直系卑属) 1/2 (直系卑属で残りの1/2を相続)
第2順位  親(直系尊属) 2/3 (直系尊属で残りの1/3を相続)
第3順位 兄弟姉妹 3/4 (兄弟姉妹で残りの1/4を相続)

■ 第1順位:子供(直系卑属)

故人に子供がいる場合には、その方は法定相続人となります。もしも、既に子供が亡くなっている場合、孫がいればその孫が法定相続人の資格を得ます。これを代襲相続といいます。(子供が存命の場合には子供のみが相続人となります)

 

■ 第2順位:親(直系尊属)

故人に子供や孫といった直径卑属がいない場合には、親が法定相続人となります。親が亡くなっているが祖父母がいる場合には、祖父母が相続人となります。(父母も祖父母もいる場合には、父母を優先します)

 

■ 第3順位:兄弟姉妹

故人に直系卑属も直系尊属もいない場合、故人の兄弟姉妹が法定相続人となります。兄弟姉妹が既に亡くなっていて甥・姪がいる場合には、その甥・姪が法定相続人となりますが、その子供までは代襲相続とはなりません。(このケースだけは1代限りでの代襲相続となります)

 

 

相続人がいない場合

この、第1順位、第2順位、第3順位の法定相続人がいらっしゃらない場合、または、法定相続人が全員相続放棄した場合(つまり「相続人不存在」となるケース)では、対象となる相続財産は、周囲の人が勝手に処分することはできません。

 

相続人不存在の場合の手続きには次のようなものがあり、すべて手続きを終えるまでに約1年ほどの期間が必要とされています。

  • 相続財産管理人の選任
  • 債権者・受遺者への支払い
  • 相続人不存在の確定
  • 特別縁故者に対する分与

債権者、受遺者、特別縁故者に分配してもなお、余った遺産は、国庫に納められることになりますが、これらの手続きは自動的に行われるわけではありません。

 

まず、相続財産管理人の選任は、利害関係者(債権者、特定受遺者、特別縁故者)や検察官が家庭裁判所に申立を行います。通常、相続財産管理人には遺産から報酬を支払う(差し引かれる)こととなります。相続財産管理人が選任されると官報で公告されますが、これは相続人がいれば申し出るように促すための手続きです。

その後も債権者・受遺者の確認の公告、相続人捜索の公告が行われ、それでも相続人が見つからなければ、ここでようやく相続人不存在が確定することになります。

 

その後、特別縁故者への遺産分与の手続きが始まるのですが、相続人不存在確定後3か月以内に、家庭裁判所に相続財産分与の申し立てを行わなければならず、それが認められるためにはいくつかの要件を満たす必要があります。

 

法定相続人となる人がおらず、自身が亡くなったときに相続人不存在となる可能性が高い方は、生前に遺言を書いておくことをお勧めします。特定の人に遺産を全部与える遺言があれば、相続人不存在とはならないので、ご自身の意思に沿った相続を行うことができます。